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名張市つつじが丘おもちゃ病院

三重県名張市つつじが丘でおもちゃの病院を開院しています。年中無休で修理は無料、部品代のみ実費です。おもちゃの修理依頼は tutuji@cb4.so-net.ne.jp へメールにてご連絡下さい。なお、宅配便での受け付けは行っておりません。このブログにはおもちゃ等の修理事例やツール製作などを載せていきます。故障診断や修理方法の改善等、ご意見をお寄せ下さい。

笑い転げる猫の修理(音声再生換装)

本件は(愛知県)小牧市のおもちゃドクター様の修理事例であり、COBチップが故障していたため、つつじが丘おもちゃ病院(当院)が提供している 「故障したICやマイコンの代替品をお作りするサービス」 を利用していただいた。
当記事には依頼元の小牧市のおもちゃドクター様から提供していただいた情報や資料が含まれている。

1.患者
笑い転げる猫
笑い転げる猫の修理(音声再生換装)外観
いつまでリンクがあるか判らないが、このおもちゃの動画は ここ

2.症状
①笑わない。

②動かない。

3.診察(依頼元が実施)
①COBチップの不良と診断した。

4.治療
①COBチップを別のマイコンで換装する。ファームウェアの開発を当院で行った。

②【ファームウェアの要件】(依頼元主体で実施し、当院が技術支援する)
・電源は電池3本の4.5V。sleep、Wakeupは不要。

・音センサーからの信号入力をトリガとして、笑い声を発声しながらモーターを正逆転制御する。

・音声(笑い声)は依頼元から支給され、長さを約8秒にトリミングする。

・音声データは8ksps、8ビットPCM、8秒間で512kビットになるので、24FC512に置く。

・音センサーからの信号は正論理でTTLレベル。少なくとも10msはレベルが安定する。

・モーター制御は正転/逆転の切り替えのみで、速度制御は不要。

・モーター制御出力はCMOSレベルで負荷電流は10mA以下。

・音声再生の繰返し回数とモーター制御のシナリオは実装後に調整可能とする。

・デバイスはPIC16F1705を使用する。

・全体の回路として下記が提示された。
笑い転げる猫の修理(音声再生換装)治療1
上記回路図には24FC512の接続は未記入だが、RA4にSCL、RA5にSDAを接続することを当方から提案した。また、I2Cインタフェースとスピーカーのバッファアンプ回路は下記に替えていただくようお願いした。
笑い転げる猫の修理(音声再生換装)治療2

②【ファームウェアの設計】(当院作業)
・当ブログの「 PICで音声再生 」で紹介したファームウェアの「音声データを外部のI2Cメモリに置くタイプ」をベースにカスタマイズした。最新の「電オルゴール+音声再生」のファームウェアではI2Cメモリをサポートしていないので、この選択にならざるを得なかった。「電子オルゴール+音声再生」でのI2Cメモリサポートは、今回その必要性を感じたので、今後の機能拡充の課題とする。

・動作シナリオはプログラム中に動作シナリオテーブルを登録する方式とした。設定例を以下に示す。

笑い転げる猫の修理(音声再生換装)治療3

センサー信号が入ると音声再生を既定の回数だけ繰返し再生する。再生中はシナリオ定義に従ってモーターを制御する。シナリオの最後まで進むと最初に戻ってシナリオを繰返す。

【ファームウェアの開発】(当院作業)
③開発環境はMPLABX、テストベンチは「音声データを外部のI2Cメモリに置くタイプ」の基板をそのまま流用した。12F615を16F1705に差し替えて使用する。そのために、SCLとSDAのピン割当てを前述のように提案させていただいた。
笑い転げる猫の修理(音声再生換装)治療4
笑い転げる猫の修理(音声再生換装)治療5

音声再生の試聴
(当方は24FC256しか手持ちが無かったので前半4秒間の再生である)

【実装】(依頼元作業)
実装の過程について依頼元から情報を得ていないが、動作確認の動画をいただいている。


【ダウンロード】
設計資料とファームウェアのMPLABXプロジェクトは ここから ダウンロードできる。

【後日談】
数年後に、このおもちゃの実際の動作を見る機会があり、そのときに本ファームウェアの重大な欠陥に気が付いた。

音を検知して何回か転げまわるのだが、必ずうつ伏せの態勢で止まる。尻尾が回転して転げる仕掛けになっていて、尻尾の回転角度を検知して、動作を制御しているようだ。

このことは依頼元からの要件に含まれてなく、当方も気が回らなかった。不完全な修理になってしまい申し訳ないと反省している。
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  1. 2015/07/25(土) 19:30:45|
  2. マイコン換装
  3. | コメント:0

プラレール江ノ電の修理(軸受工作)

1.患者
プラレール江ノ電
プラレール江ノ電(軸受工作)外観

2.症状
①走らない。

②サウンドが出ない。

3.診察
①車輪軸とギア軸を押える車両内のプラ部品が欠損していて、内部が見えている。このため、ギアと車輪がブラブラな状態になっている。
プラレール江ノ電(軸受工作)診察

4.治療
①元々のプラ部品を作るのはメンドイので、車輪軸とギア軸を別々にシャーシに固定するように工作する。ギア軸は0.6mmφの針金で軸受に縛り付ける。
プラレール江ノ電(軸受工作)治療1
プラレール江ノ電(軸受工作)治療2

②車輪軸は1.6mmφの針金で受け金具を作り、シャーシに2mm皿ネジで止める。
プラレール江ノ電(軸受工作)治療3

③基板とリミットSWを取り付けて、滑らかに回転することを確認した。
プラレール江ノ電(軸受工作)治療4

④最後にボディーを被せて走行テストをして、修理完了した。
  1. 2015/07/23(木) 11:37:09|
  2. メカ修理
  3. | コメント:0

江ノ電108号車の修理(タイヤホイール割れ)

1.患者
江ノ電108号車
江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)外観

2.症状
①走らない。

3.診察
①タイヤホイールと車軸間が滑っていて、動力が伝わっていない。

②原因はタイヤホイールの割れで、左右とも酷く割れていた。
江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)診察1

江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)診察2

4.治療
①ジュラコン棒材でタイヤホイールを新規に作って取り替える。
江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)治療1
江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)治療2

②滑らかに走ることを確認して修理完了した。
江ノ電108号車(タイヤホイール割れ)治療3
  1. 2015/07/23(木) 11:22:43|
  2. メカ修理
  3. | コメント:0

電子オルゴール+音声再生の改善(Ver5_1)

おもちゃの壊れたCOBチップの換装でよく使っている電子オルゴール+音声再生のファームウェアだが、度々機能改善を施してきた。今回も、とあるおもちゃの修理で機能不備を感じたため改善を行い、Ver5_1を公開する。なおPIC版とLPC版の両方に実施した。

【改善内容】
①音声再生終了時のポップノイズを抑制する。
・音声の最後のPCMデータは通常は0ではない。しかし、音声再生の終了時は出力を0にする必要がある。そのため音声再生終了時にポップノイズが出てしまう。
・そこで、音声再生終了時にすぐに出力を0にするのではなく、徐々に0まで下げて行くようにした。これは元々の機能不備。
・下げるスピードは定数宣言で可変できる。

②音符データの音価と音高のビット数の割り当てを変更した。
・音高コードが15種類までという制約に抵触する曲が数曲存在していて、直接指定音符でのコードで対応して来た。
・例えばトーマスのテーマ曲2では曲の途中で転調しており、音高コードは22種類が必要になる。
・音価コードの種類は、今までに作った音符データでは7種類までに収まっていて、それ以上には増えそうにない。
・そのため音符データのビット数の配分を改めて、音価コードは3ビット、音高コードは5ビットにした。
・公開ファイル中の音符データは、この仕様で作り替えている。

③オルゴール演奏処理の周期と音声再生処理の周期を設定可能とした。
・PICはCPU能力が低いため演奏パート数とサンプルレートに妥協点を見出す必要がある。
・そのため、PWM周期に対するオルゴール演奏処理周期と音声再生処理周期のプリスケール値を設定可能として、調整をし易くした。
・副次的に音声データのサンプリングレートにも容易に合わせ込み(PWM周波数の整数分の1)が可能となった。

【公開ファイル】
電子オルゴール+音声再生(Ver5_1)のファームウェアおよび関連するファイルは ここから ダウンロードできる。
  1. 2015/07/22(水) 16:35:44|
  2. 電子オルゴール+音声
  3. | コメント:0

サウンドきかんしゃトーマスの修理(電子オルゴール換装)

1.患者
サウンドきかんしゃトーマス(増田屋)
サウンドきかんしゃトーマス(電子オルゴール換装)外観
ネットでの商品説明は以下のとおり。

・ワンタッチのボタン操作でトーマスのメロディを奏で、さらにポッポーと汽笛を鳴らしてコロガシて遊べる。

・トーマスのテーマ曲が流れる「メロディボタン」と、トーマスの元気な汽笛が聞ける「きてきボタン」を使ってトーマスと楽しく遊ぼう!

これと同型のおもちゃを以前に修理したことがあり、そのときの記録では、「メロディボタン」は煙突、「きてきボタン」は蒸気ドームである。

2.症状
①煙突を押しても、蒸気ドームを押しても何もならない。

3.診察
①基板にはCOBチップが1個あるのみで、他に能動部品は無い。
サウンドきかんしゃトーマス(電子オルゴール換装)診察1

②COBチップに入るところのパターンで、VddとGND、および煙突SW、蒸気ドームSWの信号が正常に入力されていることを確認した。

③スピーカーのバッファアンプはなく、COBチップが直接スピーカーを鳴らしている。COBチップから出てきたところのパターンで信号観測したがGNDに張り付いたまま何らの信号も観測されなかった。

④R1(390k)はRCオシレータの時定数かも知れない。抵抗値は正常だったが、何も信号は観測されなかった。

⑤電源SWが無く、イベントが無いときはsleepしていると思われる。SWをオンして電源電流の変化を観察した。その結果、電源投入後は1uA以下。煙突SWをオンしたら1.6mAになり、オフに戻してもいつまでも1.6mAのままで電流が切れない。蒸気ドームSWをオンしても1uA以下のままで動き出さない。ポート変化でWakeupするはずだが、この振る舞いが異なるのが怪しげだ。

⑥パスコンの容量抜けでCPUがハングアップしてしまうことがあり得るので、パスコンを追加してみたが、状況に変化は無かった。

⑦上記の状況からCOBチップの故障と判断した。

4.治療
①COBチップをPICマイコンの電子オルゴールで換装する。PICではスピーカーを直接駆動することはできないので、バッファアンプを設ける。

②PICマイコンで実現する機能は以下のとおり。
・トーマスのテーマ曲を演奏する。

・汽笛音を発声する。

【要件】
③電子オルゴール
・「煙突SW」のオンでトーマスのテーマ曲を演奏する。

・トーマスのテーマ曲は2種類あり、演奏中にオンすると曲を切り替える。

・演奏を途中で停止する機能は設けない。

④音声再生
・「蒸気ドームSW」のオンで蒸気音「シュッシュッ」を再生する。

・オンしている間は再生を繰返す。

・音声再生中にオンすると汽笛「ポー」を再生する。そのためオフした後も数秒間は蒸気音「シュッシュッ」の再生を続けるようにして、再生音が途切れないようにする。

⑤sleep
・演奏と音声再生をしていない間はsleepして、SWのオンでWakeupする。

【設計】
⑥「 PIC電子オルゴールVer5 」をベースにカスタマイズする。

⑦デバイス選定
・音声の長さは高々1秒強であるのとコスト観点で、8kワードのメモリを持つPIC16F1705(2015年秋月価格@110円)を採用する。

⑧トーマスのテーマ曲は手持ちが無かったので、音符データは2曲とも今回新規に作成した。
・うち1曲は曲の途中で調が変わるもので、電子オルゴールの機能制約「音高は15種類まで」に抵触してしまった。そのため、オルゴールエンジンを以下の仕様に改造した。

[改造前]
音符データの上位4ビットで音価コード、下位4ビットで音高コードを表す

[改造後]
音符データの上位3ビットで音価コード、下位5ビットで音高コードを表す

今までに作った音符データを調査したところ、音価は7種類で賄えることが判った。音高が15種類を超える曲がたまにあり、直接指定音符データで対応していた。

⑨SW回路
・元々の回路は、SWはハイサイドに配置されていて、正論理であった。

・診察時に、既存基板は待機時電流が無視できないことが判っているので、SWパターン部分のみを切り離して流用する。

・PICにインタフェースが容易な負論理に変えて内部プルアップする。

⑩固有処理(コールバック関数)の呼出し周期を10ms(標準値)にして、その周期でSWをポーリングする。チャタリング防止のため40ms以上の信号安定で有効とする。

⑪SWの評価と動作機能は【要件】のとおりとする。

【ファームウェア開発】
⑫開発環境
・MPLABXでシミュレーションデバグまでを実施する。

・実機走行確認はプログラマー上でテストランさせる。
サウンドきかんしゃトーマス(電子オルゴール換装)治療1

⑬開発したファームウェアは ここから ダウンロードできる。
・ディレクトリ「iga_thomas_1705.X」がMPLABXのプロジェクトディレクトリである。

・ソースコードとリンカースクリプトはその1つ上のディレクトリにある。

・ディレクトリ「voice」は音声の編集やコード化するための資材が置かれていて、MPLABXには無関係である。

・ディレクトリ「ドキュメント」にはドキュメントを置いている。MPLABXには無関係である。

⑭【回路図】
代替した回路図
サウンドきかんしゃトーマス(電子オルゴール換装)治療回路図

⑮【実装】
・既存基板をパターンカットしてSWパターンを独立させる。

・PICにスピーカーのバッファアンプを空中配線して、リード線で既存基板のSWパターンを接続する。

・動作確認後に、PICを既存基板にホットボンドで固定する。このとき、ファームウェアの書き換えが可能なようにICSPピンは露出させておく。
サウンドきかんしゃトーマス(電子オルゴール換装)治療2

⑯動作確認して修理が完了した。

再生音はこれ
  1. 2015/07/22(水) 12:14:55|
  2. マイコン換装
  3. | コメント:4

アンパンマン電動レールでGO!GO!DXの修理(マイコン換装)

本件は、(埼玉県)東松山おもちゃの病院様の修理事例であり、COBチップが故障していたため、つつじが丘おもちゃ病院(当院)が提供している 「故障したICやマイコンの代替品をお作りするサービス」 を利用していただいた。
当記事には依頼元の東松山おもちゃの病院様から提供していただいた情報や資料が含まれている。

バッテリーの監視機能を付加した改善版も作ったので、これから応用する人は こちら を使って欲しい。

1.患者
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(アガツマ)
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)外観
幼児向けの乗用おもちゃだ。

【メーカーサイトの説明書き】
●レールを敷いても、レールなしでも遊べます。
●レバーの切り替えで電動走行、フリー走行が選べます。
●コントローラーには前進・後進・ストップの走行操作機能の他に「アンパンマンのおしゃべりボタン」と「アンパンマンのマーチが流れるメロディボタン」が付いています。
●セット内容:本体一式、レール12本

ハンドルのところに赤外線リモコンが付いていて、幼児が操作することもできる。また、取り外して親御さんが操作することもできる。

2.症状
①全く動作しない。

3.診察(依頼元が実施)
①リモコン送信機からは赤外線が出ている。依頼元にて観測した赤外線信号を以下に示す。
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)診察1
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)診察2

②車体の中にある制御基板のCOBチップが働いていない。その根拠は
・COBチップにVddの5VおよびGNDは与えられている。
・COBチップは内蔵クロックで動作しているので、クロックが正常かどうかは診断できない。
・赤外線の受信信号はCOBチップに入る直前のパターンにて信号波形が確認できている。
・モータードライブ回路はハーフブリッジのデバイス2個(NchanelMOSFETのAPM7328とPchのPAXAX?)で構成されていて、赤外線信号を受信してもモータードライバーへの信号がCOBチップから出て来ない。

以上のことから依頼元では、車体側のCOBチップの故障と判断した。

4.治療
①故障したCOBチップをPICマイコンで換装することにして、ファームウェアの開発が当院へ依頼された。

今回のファームウェア開発の全体の流れは以下のようになった。
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療1

依頼元とのやり取りは電子メールでの情報授受の他に、Skypeを利用してインタラクティブに意志疎通を行った。

【要件定義】(依頼元主体で実施し、当院が技術支援する)
②リモコンボタンの機能
・当初は、「合計9種類の赤外線信号のうち、スイッチの数である5種類の信号が判別できれば良い」と要件提示されたが、赤外線信号はそれぞれ独立しているのでファームウェアから見れば開発上の差は無いことを伝えて、9種類すべてを識別することとした。

・「GO!・STOP・BACKの操作時に効果音が鳴るようになっているが、効果音の発声は必須では無い」とのことだが、できるだけ実現する方向で検討することとした。

③音声再生と曲演奏
・音声の合計時間が長くなれば所要メモリ量が増大する。8kspsの場合1秒当たり8kバイト(4kワード)が必要になる。16F1705(8kワード)では音声データのみでも2秒間になる。

・大きなメモリを実装すれば多くの音声が再生できるが、高いコストを掛けての修理は本末転倒である。簡易に且つ廉価に機能を回復するべく創意工夫をすることが当院のポリシーであり、コストを掛けて完全な機能回復を目指すならメーカー修理を選択すべきだ。

・デバイスの選定、曲演奏と音声再生の実現範囲を当院から下記のように提案した。
◆「メロディ」ボタンで「列車の通過音(ガタンゴトン)」と「踏切警報音(カンカンカン)」の2種類の効果音を発声させる。
◆「アンパンマン」ボタンで「アンパンマンのマーチ」、「アンパンマンたいそう」、「ミッキーマウスマーチ」、「小さな世界」の4曲をオルゴール演奏する。
◆「GO!」、「STOP」、「BACK」のボタンを押すと、それぞれに対応して「ピューン↑」、「プー」、「ピューン↓」の効果音を発声させる。

・オルゴール演奏と効果音発声は並行実行する。これはPIC電子オルゴールの元々の機能である。

・デバイスはPIC16F1705(2015年秋月価格110円)を採用し、音声の合計時間を2秒弱に絞ることとした。

・当方で選んだ効果音のWAVファイルを依頼元へ送付し、評価していただいた結果、了承を得た。

・要件確認の中で、オルゴール演奏中に停止(STOP)ボタンが押されると演奏を中断することが追加された。

④運行制御について
・幼児が乗って走行するため、走行開始するときと停止するときは徐々に走行速度を増減する。完全停止状態から定常速度までの加速に掛ける時間は約2秒とする。走行状態から停止する場合も相応の時間を掛けて減速する。

・モーターとメカの負担を軽減するため、逆転する場合はデッドタイムを設ける。

・長時間に渡り操作が無かった場合でも、自動停止は行わない。

⑤赤外線受信モジュールとのインタフェース
・赤外線受信モジュールから直接信号が入力される。信号のタイミングは「2.診察」の節を参照。

・負論理でPIC側でも内部プルアップする。

・「メロディ」ボタンと「アンパンマン」ボタンは、ボタンを押す毎に赤外線信号の機能コードがラウンドロビンに切り替わって行く。

・ボタンを押したままにすると同じ機能コードが約100ms毎に繰返し送信される。

⑥モーター制御インタフェース
・既存のHブリッジ回路は正常であることが確認できたので、それを利用することとした。既存の回路図を依頼元に書いていただいた。
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療2
上記の回路図でQ7とQ8がバーポーラトランジスタの記号で書かれているが、実際にはFETであるとのこと。

・インタフェース信号は正転と逆転の2本。

・正論理。

・LレベルはGND、Hレベルは4.5V以上。

・負荷電流は、静的には数mA程度。動的には100Ωを介してゲートチャージ電流が発生するが、モーター駆動のPWM周期はPIC電子オルゴールの仕様上数10msになるので、損失の考慮は不要である。

⑦電源の要件
・既存の電源回路の回路図を書いていただいた。
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療3

・電源の6V蓄電池からダイオード2個を通して、COBチップへ電源が供給されている。実測5Vになるとのことで、これをPICのVddとして使うこととした。

・オートパワーオフ等の省電力設定は不要とのこと。

⑧ポートの割当て
依頼元の意向を訊いて、下記とした。
;RC0:モーター正転出力
;RC1:モーター逆転出力
;RC2:PWM(P1A)出力(正極性)
;RC3:赤外線信号入力(負論理)

【ファームウェアの設計】(当院作業)
⑨PIC電子オルゴールVer5をベースに、今回提示された要件でカスタマイズする。

⑩赤外線信号のデコード方法
・PIC電子オルゴールのPWM周期である32us毎のタイマー割込みで赤外線モジュールからの信号をポーリングして、赤外線信号を判別する。

・依頼元から提示いただいた赤外線信号の観測結果(2.診察の節を参照)から割り出した赤外線信号の機能コードは以下のとおり。

;赤外線信号
;フレーム構成:リーダー+機能コード(8ビット)+反転コード(8ビット)+トレイラ(1ビット)
;リーダー:オン2.9ms+オフ1.7ms
;ビット値0:オン0.6ms+オフ0.6ms
;ビット値1:オン0.6ms+オフ1.2ms
;トレイラ:オン0.6ms
;フレーム周期:100ms(この値は上述の赤外線信号の図面からは判らなかったので、依頼元へ問い合わせて得た値である)

;赤外線機能コードと動作
;GO:b'11001100'
;STOP:b'11101110'
;BACK:b'10101010'
;アンパンマン①:b'00001001'
;アンパンマン②:b'01001001'
;アンパンマン③:b'10001001'
;アンパンマン④:b'11001001'
;メロディ①:b'00010001'
;メロディ②:b'10010001'

・16ビットに満たないフレームは無視する。

・機能コードと反転コードが合致しないデータは捨てる。

⑪モーターのPWM制御
・PWMの1ステップを、PIC電子オルゴールの固有処理コールバック関数の呼出し周期の10msとする。固有処理コールバック関数の中でPWM波形を作ろう、と言う考えだ。

・ステップ数を8(分解能は1/8)として、PWM周期は80ms(周波数は120Hz)とする。

・加減速制御の全体の時間(停止から全速まで)を2560msとするとPWMの32周期に相当する。

・1ステップを1ビットに対応させて、PWM1周期分のPWM出力波形を1バイトで表現する。各デューティ値毎のデータは以下とする。
dt b'00000000' ;0/8
dt b'00000001' ;1/8
dt b'00010001' ;2/8
dt b'00100101' ;3/8
dt b'01010101' ;4/8
dt b'01011011' ;5/8
dt b'01110111' ;6/8
dt b'01111111' ;7/8
dt b'11111111' ;8/8

これらのデータを32バイト並べて、加減速制御テーブルを作る。

・加減速制御テーブルは加速用と減速用にそれぞれ用意し、独立してチューニングできるようにする。

⑫運行制御
・完全停止していないと前進または後進を開始しない運行条件とする。従って、前進からいきなり後進に切り替わることは無くなる。

・加速中に停止が指示された(つまり全速走行にまで達していない段階の)場合は、加速経過時間に相応する減速時間を経過させる。例えば加速開始直後に停止が指示されると、速度はゼロに近いので直ちに停止する。

【テストドライバーの製作】(当院作業)
⑬当院にはリモコン送信機が無いので、ファームウェアのテストを実施するためのテストドライバーとしてリモコン送信機のクローンを製作した。

テストドライバー
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療4

送信信号波形(前進(GO!)のとき)
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療5

テスト風景
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療6

アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療7

【ファームウェアの開発】(当院作業)
⑭ファームウェアは先ず赤外線信号のデコード部分から開発を始め、加減速制御と運行制御機能の無いバージョンを作り、依頼元に評価していただいた。その結果、特に要件変更は無く、開発を進めることで了承された。

⑮フル機能を搭載したバージョンを送付し、評価していただいた。その結果、停止時は減速制御は不要で、停止(STOP)の指示で直ちにモーターを完全オフにして惰性で自然に減速して行くのが良いことが判った。但し、次の前進/後進の動作開始までは待ち時間を設けることにした。

⑯減速制御を外し、加速に要した時間の半分の時間を次の動作開始までの待ち時間として、ファームウェアを変更して、再度評価していただいた。その結果、動作良好との回答を得て、開発を終了した。

【実装】(依頼元作業)
⑰依頼元からいただいた実装状況の画像を以下に掲げておく。
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療8
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療9
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療10
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療11
アンパンマン電動レールでGO!GO!DX(マイコン換装)治療12

⑱依頼元で運用試験を行った結果、前進と後進の加速制御も不要と言うことになり機能削除した。結局、PWM制御は蛇足だった。最終的な運行制御機能は以下となった。

・前進、または後進指示を受けると効果音を鳴らして、鳴り終わった後モーターをオンする。

・停止指示を受けると直ちにモーターをオフして、同時に効果音を鳴らす。

・前進動作中に後進指示を受けると、直ちにモーターをオフし、後進指示時の動作(すぐにモーターを逆転させるのではない)を行う。

・後進動作中に前進指示を受けた場合も同様の動作を行う。


【再生音と動作確認動画】
16F1705は8kワードのメモリがあるので当初は2秒弱を目標に音声データをトリミングしたが、切り詰めても2.2秒になり入り切らない。そのため最後にはレートを5kspsまで落とすことで対応した。5kspsでも実用になる音が出ている。
再生音はこれ

動作確認の動画はこれ。
メカの騒音が大きくて音声再生の音は乗っている子どもにしか聞こえない。メカの不具合では無く、YouTubeの動画を見ても元々うるさいメカのようだ。

【ダウンロード】
詳細な資料とファームウェアのMPLABXプロジェクトは ここから ダウンロードできる。
  1. 2015/07/15(水) 06:44:48|
  2. マイコン換装
  3. | コメント:0

プロフィール

大泉茂幸

Author:大泉茂幸
名張市つつじが丘おもちゃ病院
名張市つつじが丘南3番町129
tutuji@cb4.so-net.ne.jp
090-5534-6494
連絡は上記のメール、またはSMSでお願いします。

子どもの頃から趣味は電子工作一筋でやってきました。理科離れが進む中で科学技術に興味を持つ子どもが少しでも増えて行くことを願って、子ども達に電子工作の活動の場を提供しています。

1981年からおもちゃ病院の活動を始め、2014年に三重県名張市への移住を機に「つつじが丘おもちゃ病院」を開院しました。自分でおもちゃを設計し製作する【おもちゃ工房】と、マイコンを応用した電子工作を楽しむ【マイコンクラブ】も併設しています。新規参加メンバーを募集しています。

当ブログで公開している技術情報や成果物のご利用および再配布はフリーです。読者様の技術活動のお役に立てば幸いです。ご利用いただいた結果や感想等を記事へのコメントやメールでフィードバックしていただけると有難いです。

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