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名張市つつじが丘おもちゃ病院

三重県名張市つつじが丘でおもちゃの病院を開院しています。年中無休で修理は無料、部品代のみ実費です。おもちゃの修理依頼は tutuji@cb4.so-net.ne.jp へメールにてご連絡下さい。なお、宅配便での受け付けは行っておりません。このブログにはおもちゃ等の修理事例やツール製作などを載せていきます。故障診断や修理方法の改善等、ご意見をお寄せ下さい。

ラジコンRASTAR社の修理(超再生・デコーダ不良)

1.患者
ラジコン RASTAR社1/14ランボルギーニ
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)外観1

車体裏
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)外観2

コントローラ
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)外観3

2.症状
①コントローラを車に10cmくらいに近付けないと動作しない。

3.診察
①コントローラの送信電波をモニタする。
(オシロスコープは×10プローブを使用しているので、この記事内のオシロスコープ画面はすべて電圧軸を10倍して読み取って欲しい)

【送信電波の信号波形】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察1
・信号波形からTX2/RX2のプロトコルが確認できる。信号タイミングは周期が1msと2msでデータシートでの標準値となっている。
・送信出力も他のラジコンのコントローラと比べて同程度のレベルだった。
・送信側は正常であり、受信側の不具合であると判断した。

②コントローラを車体に近付けないと動かないという症状からは故障個所を特定し兼ねるので、超再生検波からデコーダ、Hブリッジへと、信号の流れに沿って順に診ていくことにする。正常動作している部分も「健康診断」のつもりで確認していく。

【受信側基板】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察2

ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察3

③この車はアンテナが車体の外に出ていないので、基板のアンテナ端子の信号観測で超再生検波回路のクエンチング動作を確認する。

【超再生検波回路部分の拡大画像】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察4

【アンテナ端子の信号波形】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察5

【エミッタ信号波形】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察6
・27MHzで「安定に」発振していた。クエンチング動作が見られない。

④超再生検波回路は、TX2/RX2データシートの応用回路図通りの構成で、回路定数が多少違っていた。今まで多くのラジコンを診てきたが、殆どがデータシートの応用回路の通りに作られている。

【TX2/RX2(ActionsSemiconductor社)データシートの応用回路図】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察7

⑤参考として、超再生検波回路のTrの各電極の電圧をテスターで測定した値を掲げておく。
Ve=0.41V
Vc=1.49V
Vb=0.78V

・Vb-Ve=0.78V-0.41V=0.38Vとなり、Trはカットオフ状態にあると思いがちだが、発振しているので平均値は障壁電圧よりも低い値になる。つまり、C級動作状態にある訳だ。逆に障壁電圧よりも低くなっていることが発振していることの判断根拠となる。

⑥クエンチング動作しないのは、クエンチング時定数回路の不良が疑われる。Trの印加電圧に異常がないことからエミッタ抵抗(560Ω)は問題が無く、コンデンサ(332)が容量抜けであるか配線切れである可能性が高い。

⑦エミッタのコンデンサ(332)は、実際の基板ではシルク印刷のC8が該当する。目視では半田付け不良や配線パターン切れは認められず、念の為再半田してみたが好転しない。表面実装部品のため部品定数は不明であるが、容量抜けと判断して、試しに332のコンデンサを重ねて取り付けてみた。
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察8

【332取り付け後のエミッタ信号波形】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察9
・322取り付け後はクエンチング動作が復活し、その周波数は270kHzくらいで妥当な値だ。

【アンテナ端子の信号波形】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察10
・RFの発振周波数は27MHzであることを確認した。
・これで超再生検波回路は修復できた。

⑧しかし、飛距離は1m程度に留まり車体の動きはギクシャクして安定していないので、次にデコーダを診る。

【RX2のアンプ部分の信号波形】
RX2のVI1(青)とSI(赤)の信号波形(車体とコントローラ間の距離は1mの近さのとき)
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察11
・SIの信号波形は正常である。
・この信号状態でも、車体の動作がギクシャクする。RX2のデコード出力を測ってみたら、そこでバタついていた。

RX2のVI1(青)とSI(赤)の信号波形(コントローラを2m離したとき)
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察12

・アンプ出力が乱れている。
・検波回路の出力レベルはかなり低下しているが変調信号が確認できるレベルなので、検波回路の感度不足ではなく、RX2のアンプ部分の不良と考えられる。

⑨車体とコントローラを近付けてSIに正常な信号が入力されているにも関わらずデコード出力がバタつくので、送信側(TX2)と受信側(RX2)のクロックがズレていないか確認した。

【TX2のクロック】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察13
・129.1KHz

【RX2のクロック】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察14
・139.2KHz
・送信側とのズレは10%以下であり、問題無い。
・デコード出力が安定しないのは、RX2のデコーダ部分の不良と判断した。

⑩ここまで来て、ふと気付いたのだが、RX2の出力信号のHレベルが4V近くもある。RX2のVDD(ピン13)を測ると5V近く掛かっていた。基板を確認すると、ツェナーダイオードが付いていないことが判った。

【定電圧回路部分の拡大】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察15
・シルク印刷はD2があるのだが、実装されていない。
・RX2のデータシートでは、電源電圧はMAX5Vとなっている。また、超再生検波回路の安定動作のためにもツェナーダイオードは必須であるので、3.3Vのものを取り付けた。
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)診察16
・RX2のVDDと超再生検波回路の電源は3.4Vになった。

⑪動作不良と見られるRX2を取り外して、デコード出力(FORWARD、BACKWARD、RIGHT、LEFT)にVDDを印加して、各モーターが駆動されることを確認した。Hブリッジには問題が無いと判断した。

4.治療
①超再生検波回路の動作不良は診察の過程でエミッタのコンデンサ332を交換して良好となった。

②電源回路のツェナーダイオード欠損は、3.3Vツェナーダイオードを装着した。

③RX2はアンプ部分とデコーダ部分の両方が不良のため、4069と12F509で代替回路を作って換装することにした。コスト的にはRX2が@90円(2016年イーエレ)、4069が@22円(2016年マルツ)、12F509が@50円(2026年秋月)であり大差は無い。4069の方が素子数が多く、性能を担保することが容易である。また、汎用のマイコンを使う方がデコード処理のチューニングが行いよく、何らかの不具合が出たときに対応しやすい。

【回路図】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療1

【実装画像】
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療2

ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療3

ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療4

④換装後の動作確認

【波形整形回路の入出力信号波形】
6.8kΩの入力端(青)と4069の3段目出力(赤)の信号波形
車体とコントローラ間の距離が1mのとき
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療5
・アンプのゲインが大きいため、換装前より切れが良くなっている。

車体とコントローラ間の距離が10mのとき
ラジコンRASTAR社(超再生・デコーダ不良)治療6
・検波出力はかなり弱くなっているが、それでも波形整形後は綺麗な波形になっている。驚異的な信号処理性能だ。

⑤ファームウェアのプロジェクトと資料は ここから ダウンロードできる。

⑥ラジコンの電子回路を実践的に学びたい人は、よい教材が ここに あるので参考にされたい。
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  1. 2016/08/17(水) 17:20:37|
  2. マイコン換装
  3. | コメント:0

PICでSDカード再生

1.はじめに
おしゃべりおもちゃが故障したとき、その壊れたICをPICで換装するために、 電子オルゴール+音声再生のファームウェア を開発してきた。
しかし、廉価なPICはメモリが少なく、格納できる音声はかなり短いものに限られてしまう。
例えば、現時点で最もコストパフォーマンスの良い16F1705(2016年8月秋月価格@110円)はプログラムメモリが8kワードしかなく、オルゴールエンジンと演奏データを入れると残りは6kワード程度になる。8ビットPCMでサンプリングレートを6kspsに落としても格納できる音声データは2秒間でしかない。
それより長い音声再生を望む場合は、シリアルEEPROMを外付けして対応することになる。廉価なシリアルEEPROMのCAT24M01(2016年秋月価格@150円)は512kビットあり、8kspsで8秒間の音声データを格納できる。
更に長い音声データを扱うにはSDカードを使う方法がある。256MBの容量があれば8ビット8kspsで8時間超えの音声が格納できる。

単にSDカードから音声を再生するだけなら市場に出回っているボードを使えば済むのだが、おもちゃ修理に応用する場合はおもちゃの動きに合わせて音声再生ボードを制御する必要があり、そのためのマイコンが必要になる。マイコンを使うのなら、そのマイコンに音声再生をやらせて安上がりにしよう、というのが今回の狙いだ。

ということで、今回はSDカードを使った音声再生のファームウェアを公開する。

2.処理方式
①音声データはWAV形式ファイルでSDに格納しておく。SDカードはFATファイルシステムを使うのだが、ファームウェアにはFATファイルシステムを持ち込まない。
その理由は、FATファイルシステムはプログラムのコードが嵩張るのとCPU負荷も大きいため、廉価なPICには荷が重過ぎるからだ。PICとしてはSDカードをSPI接続のシリアルEEPROMとして利用したい。
同じ理由でMP3形式もサポートしない。音声はベアなPCMデータで格納する。

②SDカードへの音声データの書き込みは特別なツールを用意するのではなく、FATファイルシステムを使ってPCで行いたい。
そのため、SDカードをFATフォーマットした後、WAV形式ファイルを順次整然と収容することで、各ファイルを連続クラスタに格納する。
ファームウェアにはファイルのSDカード上のアドレスと長さを伝えることで、SDカードを物理層だけでアクセスする。
SDカード上のアドレスと長さはディスクダンプツールを使って人系で情報を取得し、ファームウェア内にハードコードする。

③ファームウェアの処理内容は極めて単純で、SDカードアクセスの初期設定、PWM出力の初期設定を行った後、SDカードからPCMデータを順次読み出して、その値でPWMデューティ値を設定するだけである。

④ターゲットデバイスにはPWMモジュールが必須だが、SPIは必須ではない。SPIはソフトウェアで実現しても16MHzのCPUクロックでは200kbps程度の性能は出るので8kspsの音声再生には十分対応できる。
ポート数は、SDインタフェース用にSPIの3本とSD選択信号1本の合わせて4本、PWM出力に1本が最低限必要で、後はアプリケーションで使うポート数が加わる。
今回のファームウェアでは8ピンの12F1501を採用した。SPIモジュールは内蔵していないのでソフトウェアで実現する。

⑤電子オルゴール+音声再生のファームウェアにもSDカードをサポートさせるための布石として、12F1822にも移植した。

⑥8ピンデバイスでは応用し難いので、14ピンデバイスの16F1503、16F1823、16F1705にも移植した。

3.回路図
PIC12F1501と電源のパスコン、それとSDカードのみのシンプルな構成だ。
信号線のSDOとSDIはクロス接続する。

PICでSDカード再生回路図

PICでSDカード再生回路図2


4.評価ボード
評価ボードと言ってもブレッドボードに組んだものだ。
PICでSDカード再生画像1

中核は12F1501だ、というより部品はこれだけ。
PICでSDカード再生画像2

SDカードの接続部分。
PICでSDカード再生画像3

SDカード本体はminiSDで、これを買ったときにSDに変換するアダプタが付いていた。これをソケット替わりに利用する。
PICでSDカード再生画像4
PICでSDカード再生画像5

SDカードアダプタにヘッダピンを繋ぐ。SDカードの端子は9Pあるが、両端はSPIモードでは使わないので、両端を除いた残り7Pを配線する。
PICでSDカード再生画像6
PICでSDカード再生画像7

5.費用
製作費用はSDカードを除いて、12F1501(70円)と電源パスコン10uF(5円)の合計75円だ。
評価ボードとして作る場合は、ICソケットやSDカードソケット、基板またはブレッドボード等が必要だが、おもちゃ修理に供するにはSDカードは直付け、すべて空中配線で既存基板にくっ付ければよいので、正味75円でできる。問題はSDカードの調達で、ヤフオクでも数百円しているので、100円台のジャンク品が見付から無ければこの修理方法は採用できないだろう。

6.再生音のサンプル
再生音はこれ

7.ファームウェア
開発したファームウェアと設計資料・資材は ここから ダウンロードできる。ディレクトリ 「SD」 配下にMPLABXのプロジェクトが格納されている。

8.SDカード上のアドレス等の取得方法
ダウンロードファイルの 「PICでSD再生.xls」 のシート名「SDアドレス取得」を参照。
  1. 2016/08/12(金) 00:07:21|
  2. 音声再生・録音再生
  3. | コメント:0

プロフィール

大泉茂幸

Author:大泉茂幸
名張市つつじが丘おもちゃ病院
名張市つつじが丘南3番町129
tutuji@cb4.so-net.ne.jp
090-5534-6494
連絡は上記のメール、またはSMSでお願いします。

子どもの頃から趣味は電子工作一筋でやってきました。理科離れが進む中で科学技術に興味を持つ子どもが少しでも増えて行くことを願って、子ども達に電子工作の活動の場を提供しています。

1981年からおもちゃ病院の活動を始め、2014年に三重県名張市への移住を機に「つつじが丘おもちゃ病院」を開院しました。自分でおもちゃを設計し製作する【おもちゃ工房】と、マイコンを応用した電子工作を楽しむ【マイコンクラブ】も併設しています。新規参加メンバーを募集しています。

当ブログで公開している技術情報や成果物の複製、改変および再配布はフリーです。読者様のおもちゃ病院活動のお役に立てば幸いです。ご利用いただいた結果や感想等を記事へのコメントやメールでフィードバックしていただけると有難いです。なお、公開ファイルは最新版を載せているので、古い記事の内容から変わっている場合があります。

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