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名張市つつじが丘おもちゃ病院

三重県名張市つつじが丘でおもちゃの病院を開院しています。年中無休で修理は無料、部品代のみ実費です。おもちゃの修理依頼は tutuji@cb4.so-net.ne.jp へメールにてご連絡下さい。なお、宅配便での受け付けは行っておりません。このブログにはおもちゃ等の修理事例やツール製作などを載せていきます。故障診断や修理方法の改善等、ご意見をお寄せ下さい。

ワイヤレスアンプAK-122の修理(送受信周波数ミスマッチ)

1.患者
ワイヤレスアンプAK-122(CEER社)
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)外観

2.症状
①ワイヤレスマイクが通じない。

②ワイヤードマイクでは正常に音が出てくるし、エコーやトーンなどの機能も働いている。

3.診察
【送信機】
①送信機は231.6MHzのクリスタル発振をバリキャップで直接FMする仕掛けになっていた。
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)診察1

②クリスタルには231.6Tと表示されていて、実測値も231.6MHzでOK。
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)診察2

③この周波数帯の受信機が無く変調がかかっているかどうかは確認できなかったが、バリキャップの印加電圧にマイク音声が載っていることは確認した。

【受信機】
④受信機はIFが10.7MHzのシングルスーパーで構成されていた。FMフロントは三洋のLA1186Nで局発はクリスタル。IFと復調はLA1140が使われている。検波出力を聞いたらノイズのみだった。

⑤局発を観測したら72.1MHzだった。恐らく9倍オーバトーンのクリスタルがカウンタを繋いだために3倍オーバトーンで発振したためと思われる。しかし3倍しても216.3であり、231.6-10.7=220.9にはならない。クリスタルを見ると227.1Rの表示があり、実測値は227.1-10.7=216.4と合致する。
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)診察3

⑥ワイヤレスマイクが通じない原因は送信機と受信機の周波数のミスマッチのためだった。そこで改めて筐体を確認すると、送信機には231.6MHz、受信機には227.1MHzのシールが貼られていた。最初からよく見ればよかった。。。

4.治療
①依頼者に確認したら、あるのはこのセットだけで、これで使えるようにしたいとのこと。送信機と受信機の周波数を合わせる改造を行うことにした。

②送信機または受信機のどちらかのクリスタルをマッチするものに取り替えればよいのだが。送信機側はクリスタル発振を直接FMしているので、クリスタルの特性が変わると装置の性能に影響が出る可能性がある。受信機の局発を替える方が安全である。220.9MHzのクリスタルは特注になる。見積もりを取ったら、なんと8千円×最小5ロット=4万円(税別)の回答が返ってきた。採用不可だ。

③昔、秋葉原で市民バンド用のPLLが放出されたことがあり、その時に買ったものが残っている。これの出力を220.9MHzにシフトすることを考えた。しかし、このPLLは可変巾が640KHzしかなく、組み合わせるクリスタルが限られる。また、サイズが大きく、筐体の空きスペースには収まらない。

④ミキサーを作るのなら、手持ちのクリスタルの組み合わせで220.9MHzが作れないかとジャンクを探したら、奇跡的に見付かった。
4.194304MHz×10+4.473924MHz×40=220.9MHz
しかし、2つとも5倍オーバトーンでは発振せず、逓倍が5段とミキサーが必要になり回路が大袈裟になる。やり始めたものの気が乗らない。

⑤そこで、RF設計のプロでいらっしゃるおもちゃドクターの HRHさん に相談したところ、既存の局発をベースに4.5MHz引く案をいただいた。この案は当初からあったのだが、イメージが近接して発生するので220.9MHz以外を抑圧し切れないのではないかと敬遠していた。 HRHさん によると、イメージ混信の可能性は増えるが復調動作そのものには影響はないとのこと。プロのお墨付きを得て方向転換した。

⑥イメージ混信を許容する、と腹を括ればもっと手抜きなことを思い付いた。受信RFと元の局発、それと4.5MHzの3つの波を既存のミキサー1個でまとめてミックスしてしまう方法だ。その実現可能性を確かめるため、ディップメーターで4.5MHzを発振させて局発部に近付けてみた。すると、検波出力からノイズが消えて送信機の音声がきれいに出てきた。実験結果はすこぶるFBだった。4.5MHzの発振器を付加するだけで改造ができそうだ。
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)治療1

⑦4,5MHzの無調整発振回路を作った。
回路図
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)治療2

基板(部品面)
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)治療3

基板(半田面)
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)治療4

製作費用は30円
(内訳)
4.5MHzクリスタル 10円
2SC1815 5円
基板 15円
その他 ジャンク再利用

⑧無調整発振回路の出力をLPF経由でLA1186Nの8ピンへ注入するつもりでいたが、近くで発振させるだけで適当に回り込んでくれることが判ったため、4.5MHz注入の配線は行わなかった。
ワイヤレスアンプAK-122(送受信周波数ミスマッチ)治療5

⑨組み戻して動作確認したところ、感度、音質、ノイズ等良好であった。

【感想】
⑩ソフトウェアは1行でも間違っていると正常に動かないのだが、アナログ回路はテキトーに作ってもそれなりに動いてくれる。アナログって、とてもフレンドリーだ。

⑪改造方法を検討するのに1か月間も費やしたが、それはとても楽しい時間だった。傍目から見ると人生の無駄使い?

⑫上記の3.診察の③項で 「この周波数帯の受信機が無く変調がかかっているかどうかは確認できなかった」 と書いたが、それは早計だった。受信機近くに発振器を置くとその波も含めてミックスしてくれることが判ったので、FMラジオでも送信周波数との差分をディップメーターで発振させれば受信できたはずだ。早速、FMラジオを90MHzに合わせて、ディップメーターで 231.6-90=141.6MHzを発振させてFMラジオに近付けるとワイヤレス送信機の音がFMラジオからクリアな音質で出てきた。この知恵は他にも活用できそうだ。
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プロフィール

大泉茂幸

Author:大泉茂幸
名張市つつじが丘おもちゃ病院
名張市つつじが丘南3番町129
tutuji@cb4.so-net.ne.jp
090-5534-6494
連絡は上記のメール、またはSMSでお願いします。

子どもの頃から趣味は電子工作一筋でやってきました。理科離れが進む中で科学技術に興味を持つ子どもが少しでも増えて行くことを願って、子ども達に電子工作の活動の場を提供しています。

1981年からおもちゃ病院の活動を始め、2014年に三重県名張市への移住を機に「つつじが丘おもちゃ病院」を開院しました。自分でおもちゃを設計し製作する【おもちゃ工房】と、マイコンを応用した電子工作を楽しむ【マイコンクラブ】も併設しています。新規参加メンバーを募集しています。

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