名張市つつじが丘おもちゃ病院

三重県名張市つつじが丘でおもちゃの病院を開院しています。年中無休で修理は無料、部品代のみ実費です。おもちゃの修理依頼は tutuji@cb4.so-net.ne.jp へメールにてご連絡下さい。なお、宅配便での受け付けは行っておりません。このブログにはおもちゃ等の修理事例やツール製作などを載せていきます。故障診断や修理方法の改善等、ご意見をお寄せ下さい。

RASTAR乗用自動車ラジコンの修理(電源・デコーダ不良)

1.患者
RASTAR社の乗用自動車ラジコン付き
アウディ TTS(ホワイト) Audi TTS Roadster
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)外観1

RURN SIGNAL?
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)外観2

プロポーショナルではない。
ステアリングは自動的にはニュートラルにならないので、送信器の操作で調節する。
マニュアル操作モードのときでも、送信器のSTOPボタンで停止する。
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)外観3

2.症状
①付属の電源アダプタを繋いでもバッテリーが充電されない。

②スタートキー押下でエンジン始動の効果音は流れる。

③ステアリングはラジコン操作で動作する。マニュアル操作では手動となり、操作はできる。

④駆動(前進、後進)はラジコンでもマニュアルでも動作しない。ラジコンでは1度だけカチッと基板から音がする。マニュアル操作ではカチッカチッカチッ・・・と継続して音がする。

⑤ウィンカーやライトなどは正常に働く。

3.診察
注)この記事のオシロ波形は、1:10プローブ使用のため電圧軸は10倍して読み取って欲しい。

①充電されない原因は電源アダプタの1次側が断線していたため。断線箇所が巻き線の中だったので修理は諦めた。

②バッテリー(6V7Ah)は過放電していた。バッテリーに20Vを数時間印加してみたが充電電流が流れ始めることはなく、復活は諦めた。

③モーターに直接通電したところ、正逆転とも正常だった。モーターの消費電流は無負荷で1A、動輪に負荷を掛けると3A以上になる。設計の範囲と思われる。

④モーターを切り離した状態では、基板からモーター正逆転の出力が出ている。モーターの正逆転はリレーによるHブリッジ回路で行われていて、カチッという音はリレーの動作音だった。モーターの負荷電流が流れるとデコーダから駆動信号の出力が途絶えることが判った。

⑤バッテリーコネクタから基板までの配線抵抗を測ったところ約0.5Ω以下であるが、モーター起動電流による電圧降下がある可能性があり、電源電圧の波形を観測した。
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)波形1
・モーター始動時には基板電源が0Vまで低下していることが判った。電源器を使っての診察であるため、電源器の容量や内部抵抗のために著しく電圧降下を起こしている可能性はある。しかし、駆動系の電圧低下と同時にデコーダのVccも1Vまで低下していることは問題がある。

・ラジコン操作モードで1度だけカチッと鳴って以降は動作しなくなるのは、このラジコンシステムは最初にペアリングが必要な方式であり、デコーダが駆動信号を出力した途端にデコーダのVccが低下してリセットされ、再度ペアリングを行うまではラジコン操作が効かなくなるためだ。

・マニュアル操作モードではラジコンのペアリングの状況に影響されないためデコーダの駆動信号出力とリセットが繰り返されて、カチッカチッカチッ・・・と継続して音が鳴る。

⑥基板の電源パターンを調べると、信号系(RF受信機、デコーダ)には3.3Vのレギュレータ回路を経由して電源供給されているが、根もとは駆動系(モータードライバ)と直結されていた。このため、駆動系の電圧低下によって信号系の電源も低下してしまっている。

⑦駆動系の電源電圧低下による影響を阻止するために、信号系の電源経路にショットキーダイオードと3300uFのパスコンを追加した。
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)回路1
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)実装1
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)波形2
・デコーダのVccは2.5V以上が確保されるようになった。

・基板電圧も最低でも2.5Vになっている。デコーダが正常稼動するようになったためPWM制御が働き、駆動モーターの起動電流がある程度緩和されたものと思われる。

・駆動モーターPWM制御の周期である約2.1msで電源電圧が変動している。この時間内でデコーダのVccが規定の電圧レベルを維持できていればよい。

・不具合とは関係はないが、このおもちゃは徐々に加速するように駆動モーターをPWM制御している。始動直後はデューティ50%くらいだが、7秒程度の時間を掛けてデューティ値が徐々に上がっていく。この機能は前進と後進の両方に働く。

⑧ラジコンでの操作は前進、後進とも良好になった。しかし、マニュアル操作では前進は良好だが、後進がカチッカチッカチッ・・・となるのが改善しない。Vcc低下の問題以外にもまだ不具合がある。

⑨マニュアル操作の信号をデコーダの入力ピンで確認すると前進後進ともに2.1Vであり、デコーダのVccが3.3Vであることから、設計通りの電圧レベルだと思われる。後進の場合に限りデコーダの動作が安定しないのは、後進の入力ピンの閾値がズレてしまっていると思われる。2.5Vを入力してやると安定した後進動作をするので、デコーダICの特性劣化と判断した。

⑩ダッシュボードからの後進信号は6V弱だが、デコーダのVccは3.3Vであるため、抵抗分圧によってインタフェースさせている。この分圧回路に抵抗を追加して、2.7Vがデコーダに入るようにした。
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)回路2
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)実装2

4.治療
①バッテリーは6V9Ah(@1500円2016年秋月)を購入して交換した。

②アダプタは別のジャンク品を再利用し、0.5A定電流充電回路を付け加えた。
RASTAR乗用自動車ラジコン(電源・デコーダ不良)回路3

③デコーダのVcc低下によるリセット事象は、信号系への電源供給回路の改善を診察の過程で実施して、不具合は解消した。

④デコーダのマニュアル後進信号の入力ピンの閾値ズレは、インタフェース回路のレベル調整を診察の過程で実施して、不具合は解消した。

5.おまけ
故障切り分けに先立って、下記の設計事項を調査した。その結果は ここから ダウンロードできる。

①基板調査(コネクタ、機能ブロック)

②デコーダ(ピン接、ピン機能)

③駆動モーターPWM制御波形
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  1. 2016/10/17(月) 16:46:16|
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プロフィール

大泉茂幸

Author:大泉茂幸
名張市つつじが丘おもちゃ病院
名張市つつじが丘南3番町129
tutuji@cb4.so-net.ne.jp
090-5534-6494
連絡は上記のメール、またはSMSでお願いします。

子どもの頃から趣味は電子工作一筋でやってきました。理科離れが進む中で科学技術に興味を持つ子どもが少しでも増えて行くことを願って、子ども達に電子工作の活動の場を提供しています。

1981年からおもちゃ病院の活動を始め、2014年に三重県名張市への移住を機に「つつじが丘おもちゃ病院」を開院しました。自分でおもちゃを設計し製作する【おもちゃ工房】と、マイコンを応用した電子工作を楽しむ【マイコンクラブ】も併設しています。新規参加メンバーを募集しています。

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