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名張市つつじが丘おもちゃ病院

三重県名張市つつじが丘でおもちゃの病院を開院しています。年中無休で修理は無料、部品代のみ実費です。おもちゃの修理依頼は tutuji@cb4.so-net.ne.jp へメールにてご連絡下さい。なお、宅配便での受け付けは行っておりません。このブログにはおもちゃ等の修理事例やツール製作などを載せていきます。故障診断や修理方法の改善等、ご意見をお寄せ下さい。

2.4GHz8chリモコンモジュール「JDY-40」の評価

【前振り】
ラジコンカーの修理でCOB故障の場合に、 SE8R01+16F1503で換装するためのファームウェア を公開している。

最近(でもないかも知れないが)、JDY-40と言う8chリモコンモジュールが出回っていて、価格は約83円(2019年AliExpress)で、SE8R01(約35円、2019年AliExpress)+16F1503(85円、2019年秋月)よりも安いのでコストメリットがある。

それで、JDY-40だけでラジコンカーの換装が可能なのか評価してみた。

なお、JDY-40はキーオン/キーオフの制御しかできないので、フルアクション方式での応用に限って評価する。


【評価観点】
JDY-40はラジコンカーの制御を意図した製品では無いので、ラジコンカーに特有の以下の機能が実現できるかどうか、を評価する。

(1)ノーコン状態の検知と自動停止

電波伝搬の阻害やコントローラ側の電源ダウンなどでノーコン状態になったとき、速やかに車体を停止させる機能がラジコンカーでは必要不可欠だ。今まで数多くのラジコンカーを診てきたが、このフェールセーフ機能が無いものは見たことが無い。

(2)正逆転の排他制御機能

前後進駆動とステアリング制御で、正転と逆転の信号が同時に出ないように排他制御する機能が必要だ。トイラジでは専用のモータードライバICを使わないで、MOSFETやTrを組み合わせただけのベアなHブリッジを使っている場合が多い。最新の2.4GHzラジコンの 「CCP社Wドライブ/Gドライブシリーズ」 もそうである。その場合に正転と逆転の信号が同時に出るとHブリッジに貫通電流が流れて素子が破壊する。

JDY-40では、8chのキーオン/キーオフの制御はそれぞれのchで独立しているので、前進に割り当てたchと後進に割り当てたchが同時にオンすることを防ぐことはできない。従って、前進と後進の操作がタクトSWで同時に押せる構造のコントローラでは、同時に押すとその時点でHブリッジの素子が破壊する。ステアリング操作についても同じことが言える。そのため、そのような操作構造のコントローラに対しては、JDY-40をそのままの形で適用する考えが成り立たない。

そうすると、評価する意味が無くなってしまうので、ここでは、シーソータイプの操作構造のコントローラを想定して、機械的に前後進、或いは右左折の操作が同時には起きないことを前提として評価を行うこととする。


【評価回路】
JDY-40の簡易マニュアルに掲載されている回路で行った。
2.4GHz8点リモコンモジュール「JDY-40」の評価回路図
簡易マニュアルでの説明書きには「7 IO」と記載されているが、「8 IO」の誤りである。ここ以外にも、簡易マニュアルには誤記が多い。

送信側は CLSS=C1、受信側は CLSS=C4 を設定している。


【評価結果】
先ずは実験動画をご覧いただきたい。


(1)ノーコン状態の検知と自動停止

結果は ×

・送信側はキーオンまたはキーオフされた瞬間に一度だけ指令を送信し、それ以外はSleepしている。受信側は新たな指令を受信するまで前回の指令を持続している。

・電波伝搬の阻害やコントローラ側の電源ダウンなどでキーオフの指令が届かなかった場合は、車体は動作し続けてしまう。

(2)正逆転の排他制御機能

結果は ×

・上記(1)と同じ理屈で、正転信号のchがオフされないまま、逆転信号のchがオン状態になってしまうことがあり得る。つまり、Hブリッジが貫通して、素子が破壊する。JDY-40がラジコンカーの制御を意図した製品ではないので、当然の結果ではある。

・例えば、距離が離れて電波が届かなくなり車体の前進が止まらなくなったとき、後進の操作をして近付いてみるだろう。そのときに電波が届いてしまうとその時点で素子が破壊する。こんな状況はよくあることだと思う。

・上記の動画では「電波伝搬の阻害」を想定して機能検証をしているが、コントローラ側の電源ダウンでも同じ状況が起きる。

 例えば、CCP社Wドライブ/Gドライブシリーズが JDY-40 をそのままの形で換装された場合、以下の操作を行うとFETが燃える。


 コントローラの操作レバーを前進に倒したまま、コントローラの電源を切る。車体は前進動作を続けている。

 操作レバーを中立に戻して、コントローラの電源を入れる。車体は前進動作を続けている。

 操作レバーを後進に倒す。車体は停止してFETが燃える。いや、正しくはFETが燃えて車体が止まる。


 ヨイコの皆さんは決してマネをしないように。

・ダメな例を示したのでこれ以上の評価は必要無いのだが、技術的な関心から送信機から受信機へ指令が伝搬するときの遅延時間を測定してみた。

2.4GHz8chリモコンモジュール「JDY-40」の評価(遅延観測)
キーオン/キーオフともに80ms以内には伝搬しているようだ。但し、数回実行して見た限りのことであり、これを根拠に設計するのは危険である。

(3)総合評価

ラジコンカーで必須な機能が JDY-40 だけでは実現できないどころか、非常に危険であることが明らかになった。そのため、外付けの制御回路で機能と安全性を確保する必要がある。

・ノーコン状態を検知させるには、一定時間(数10ms~数100ms)間隔で指令を送受信させ、指令が途切れたらノーコンと判断する。そして、自動停止する仕組みにする必要がある。それには、送信側と受信側の両方にロジック回路の追加、若しくは、マイコンでの制御が必要だ。

・正逆転の排他制御機能は受信側にロジック回路の追加が必要になる。或いは、ベアなHブリッジをブレーキング機能が付いたモータードライバーICに交換するしかない。

無設計で換装を行うと、最悪FETが燃える。これはノーコンよりも遥かに重大な問題だ。

・不足する機能を外付けの回路で補うとJDY-40の廉価性と実装の容易性が失われてしまうので、現状では、ラジコンカーの修理にJDY-40を採用するメリットは無い。と言うか、Hブリッジの貫通対策を講じないで採用してはいけない。

・重ねて言うが、外付けロジック回路を装備せずに JDY-40 だけで、ベアなHブリッジを実装したラジコンカーを換装することは極めて危険であり、やってはならない。もし、この記事を読む前にやってしまっていたなら、速やかに懺悔してリコールの手続きを執るのが宜しい。
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  1. 2019/08/25(日) 12:21:53|
  2. 2.4GHzラジコン
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大泉茂幸

Author:大泉茂幸
名張市つつじが丘おもちゃ病院
名張市つつじが丘南3番町129
tutuji@cb4.so-net.ne.jp
090-5534-6494
連絡は上記のメール、またはSMSでお願いします。

子どもの頃から趣味は電子工作一筋でやってきました。理科離れが進む中で科学技術に興味を持つ子どもが少しでも増えて行くことを願って、子ども達に電子工作の活動の場を提供しています。

1981年からおもちゃ病院の活動を始め、2014年に三重県名張市への移住を機に「つつじが丘おもちゃ病院」を開院しました。自分でおもちゃを設計し製作する【おもちゃ工房】と、マイコンを応用した電子工作を楽しむ【マイコンクラブ】も併設しています。新規参加メンバーを募集しています。

当ブログで公開している技術情報や成果物の複製、改変および再配布はフリーです。読者様のおもちゃ病院活動のお役に立てば幸いです。ご利用いただいた結果や感想等を記事へのコメントやメールでフィードバックしていただけると有難いです。なお、公開ファイルは最新版を載せているので、古い記事の内容から変わっている場合があります。

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